Africa想い出部屋

ロッジ編-2

ケニャの某国立保護区にて

夜中、物音に目を覚ました。ミシミシ、ベリベリ、バサーッ。

音はなおも続く。不安になってきた。ルーム・メイトは寝ているのだろうか。小さな声で呼びかけてみると、彼女も目を覚ましていた。

泥棒? 覗いてみる? でも、ドアを開けるのは怖い。二人で意を決してドアを開ける。音ははっきり聞こえるが、なにも見えない。それに、投石のような音もする。部屋に戻り、窓からうかがう。そのうちやっと状況がつかめた。ロッジの敷地内にゾウの群が入り込み、木を食べ出したのだ。それを追い払おうと、夜警が石を投げていたという次第。

理由が分かるともう怖くない。そのうちゾウは私たちの窓から見えるところにまで移ってきた。二人で窓にへばりついて眺める。食べ飽きたのかそれとも夜警が優勢になったのか、ゾウ達はブッシュに帰り始めた。帰り始めたのは良いのだが、なんと私たちが覗いている窓の前を通り抜けていったのだ。隣の部屋との境の小道を大きなゾウが抜けていくのは迫力ものですよ、あなた。

何頭も通り抜けるのを私たちはゆっくりと見物した。小声で感想を述べあいながら、かなりの長い時間楽しんでいた。やがて、とりわけ大きな一頭が私たちの窓の前に来た。「大きいねぇ!」思わず声が大きくなったのを聞きつけたのだろうか、ゾウが立ち止まった。とたんに私たちはフリーズしてしまった。もはや顔を見合わせることもできない。ただ、微少な空気の流れも起こさず、ひたすら彼いや彼女かな、が通り過ぎてくれるよう祈るのみ。

そのとき本当にゾウが啼いたのか私の記憶の中での創作か、、、
プワァーという声がして、ゾウは片足を前にやり、その足を後ろに戻し、首を左右に振った。そして私たちの臭いをかぎつけたのだろう、こっちを向いた。ゆぅっくりと頭をこちらに向けたゾウは、こちらに半歩進み頭を下げてきた。
キャァー!! (でもこの声は出さなかったよ、飲み込みました)

このとき踏みつぶされていたら、今日の私はないのだが・・・。
ゾウは、私たちの部屋をのぞき込んだ。 私の頭とゾウの頭は超接近。ガラス一枚隔てているだけ。 暫く眺めていたゾウは、フン!と思ったのかどうか、悠然とブッシュに帰っていった。

動物園の飼育係の方とか、サーカス関係者以外では、私たちがもしかすると、巨ゾウに一番近づいた日本人かもしれません。