Africa想い出部屋

北北東に進路を取れ! North by Northeast

エア・ショーなどという名で、搭乗機が向いている方向を、カーナビのように地図上に示して見せてくれる機内プログラムがある。
同時に、風向や風力、外気温、飛行速度、目的地までの距離や時間などといったものも表示され、それが刻々と変っていく。
飛行中はたいていこれを見ている。映画よりおもしろいと感じる。

でもその地図上の飛行機が、目的地とは全く違う方向を指していたとしたら…

某アラブ系エアー

2004年9月8日。ケニャ、ナイロビ、ジョモ・ケニャッタ国際空港。
約6週間の旅を終え帰国という日。

ドュバイ行きの飛行機は曜日によって、タンザニアのダレサラームかウガンダのエンテベか、そのどちらかから来てドュバイへ向かう。どちらもナイロビからはそう遠くなく、チェックインが始まる時間ぐらいには、まだ向こうを飛び立っていないのが普通だ。

この日は、市内から空港へ直行したのではなく、イースト・ランドを通っていったので駐機場の飛行機がよく見える。
「あれっ! 飛行機、もう着いているよ。どうしてだろう。」といぶかる私に連れ合いは「じゃぁ定刻に出るかもしれないね。その方がドュバイで楽でしょう」という。
そう、ドュバイでのトランジットは2時間ほど。遅れて到着すれば、それだけ慌ただしく空港内を移動しないといけない。定刻に出て欲しいものだ。

チェックインは手間取った。というか、係の人の作業速度が遅すぎる。おまけに、頼んであった車イスも用意されていない。あまり長く待たされているもので、心配した連れ合いがセキュリティーの係に頼み込んで中まで入ってきてくれたほどだ。

ようやく車イスが用意され、出国手続きに。そしてラウンジへと案内される。いつも通りの出国の段取りである。しかし飛行機が早く到着していたにもかかわらず搭乗案内がなかなか流れない。定刻近くになってからだろうか、やっと搭乗案内が流れたのは。
そして定刻に出て欲しいという願い(?)もむなしく、エアバスが空中に持ち上がったのは定刻を過ぎること約1時間ほどの頃だった。

前の晩はよく眠ってはいなかったものの、ドュバイ/大阪で眠りたいからとパズル本を取り出して解き始める。エアー・ショーが見たいのに、うまく表示されない…
しばらく時間がたって、何気なく隣の席のインド人が見ているエアー・ショーに目をやると、北北東を向いているはずの飛行機が西を向いているではないか!
あれっ? と思ったとたんにベルト着用サインが出た。
気流が悪いので向きを変えているのかな。そう思っているとアテンダントが座席を元に戻すようにと言って回っている。揺れは感じないのに、座席まで戻せって、そんなにお天気が悪いのかしらと考えていると、あれれ、下降している!!!!
「当機はまもなくウガンダ、エンテベ空港に到着いたします」とまるで通常どおりの機内アナウンスがある。
エーッ、私、乗り間違えたの???
うううん、JRじゃないんだから乗り間違えなんて考えられない。
おそるおそる隣の席のインド人に「この飛行機、エンテベ行きだったんですか? ドュバイ行きじゃないんですか?」と聞いてみると「エンテベからドュバイへ行くんですよ」という答え。
ウソよ! だって、チケットを見てみると間違いなくドュバイ行きだし、ドュバイ/大阪のボーディングパスも貰っている。旅程表だって、直行でのドュバイ行きになっているもの。
オロオロ(( ( ̄_ ̄;)(; ̄_ ̄) ))オロオロ

いつもは飛び上がってすぐにフルーツのサービスなんてないのに、今日はフルーツの盛り合わせが配られてきて、おかしいなと思っていたんだ。
ビクトリア湖の真上を飛んだのに、夜だから何も見えなかったし、エンテベの空港だって昼間ならまだしも夜だから何も見えない。同じなら昼間の方が良かったよ。などと独り言をいってみたところで慰めにもならない。

それにしても、西を向いていると知ったときのショック。一瞬はハイジャックかとも思った。クルーが落ち着いていたのでそれはすぐに自分で打ち消せたけれど。

結局何も分からないままに、そしてむろん大幅に遅れてドュバイ到着。
お仕事でご旅行中の日本人男性三人グループにお願いして手続きを助けていただき、ドュバイでの丸1日をお世話になって、デザート・サファリなどにもご一緒させて頂いた。
それはそれでむろん楽しかったんだけれど…

でも、あの悪夢の遠回り飛行はなんだったの?


あとから情報を紡いで分かったことはこういうことだった

ドュバイ行きの便は、当日ドュバイを出て、ナイロビを経由してエンテベへ向かい、折り返しナイロビ、ドュバイへと帰っていく。これが通常のルートで、私はその最後の区間に乗り込むはずだった。

けれどあの日、空港へ着いたときに「もう来ている」と思った飛行機は、実はまだエンテベに向かっていない、ドュバイから来て足止めされていた飛行機だったのだ。
当日、エンテベで英国系の航空機が事故か故障で滑走路をふさぎ、そのためナイロビで足止めされていたということだった。

そして、その英国系の航空会社からの要請で、エンテベで立ち往生している該当機のお客を拾ろい、当然この機の到着を待っているお客も積んで、帰路のナイロビをスキップしてドュバイに直帰することになっていたらしい。

問題は、ナイロビで搭乗客になんのアナウンスもなしにこの変更をやったということなのだ!

アナウンスすれば、当然乗り込まない人がでる。当たり前だ。私だって、分かっていれば日をずらしている。そこで姑息な手段を執ったとしか思えない。
エンテベに回れば絶対に乗り継げるはずのない大阪行きのボーディングパスを渡すなどという卑劣なことをやったんだ。

私が英語ができないから聞かされなかったのではない。スワヒリ語で完全に必要なやりとりはできていたんだから、向こうに通知する意志があればできたはずだ。それに、ドュバイでお世話になった方たちはどなたも英語が堪能だったのだが、この方たちもむろん知らされていなかった。


こういうの、道徳的に許されるんでしょうかね

今までこの「トラブルな旅」に書いてきた飛行機でのトラブルは、どれも悪意はなかったけれど、これは、悪意だと思う。あくどい商売だと思う。

言いたくはないが「ア○ブの商人」というのを身をもって知った感じ。