Africa想い出部屋

塀の上の落ちない人々!

このとき私は、タンザニアのダレサラームの高級住宅地の一角にある、日本人の友人夫妻のところにお世話になっていた。

夜中まで友人と話し込むことを『女子寮ごっこ』とよんで楽しんでいたが、その夜は、出張から戻られたご主人も加わり、「混合寮だね!」といいつつ話を弾ませていた。
しかし、お疲れだろうということで、いつもより早く全員床についた。

見出し

夜中に、物音でも聞いたのだろうか、ふと目が開いた。しばらくベッドに座っていたが何も聞こえない。けれども、何かしら気になって、窓辺によってカーテンをそっとめくってみた。

塀の下に男の人がいて、塀の上の人に何かを渡しているところだった。それも、かなり大きな物を。。。
何をしているんだろう?
とっさに泥棒とは思わなかった。その渡している物が大きすぎたことも、理解を妨げていた。しばらくじっと見ていると、塀の下の人物が暗がりに消えた。
そして、なんと、塀の上の人物が空中を歩き出した。
イヤ、正確には、私にはそう見えた。
塀の上を歩いていくのは、身のこなしが軽ければ可能だと理解できる。
けれど、その男は、塀と同じ高さで空中を歩いて、塀の向こうの暗闇に吸い込まれて消えていったのだ。
「私、寝ぼけている。。。」 そう思って一度ベッドに戻った。
しかし、ベッドで私は考えた。
「ウウン、私眠っていない。起きてる。やっぱりご主人を起こそう。もし間違っていたにしても、そのほうがいい」
そっとドアを開け、友人夫妻の部屋の前に行きノックした。
「どうしました?」 とご主人。
「泥棒です」
「(泥棒が)入りましたか?」
「いえ、(今)出ました」
なんてことはない。今にして思えば漫才である。

ご主人は銃を携えて部屋から出てきた。幼い子供たちを二人、同じ部屋に寝かせてあるので友人は寝室に残り、私とご主人と二人でそっとリビング・ダイニングへのドアを開けた。しーんとして、何事もなかったに見える。手前のダイニングの部分に、さっきの男たちがいた裏庭へでるドアがある。しかし、しっかり閉まっている。
「家のなかには入らなかったのかなぁ。」
「そうですね。外回りだけで、私が見てるのに気がついたのでしょうか。」
声を抑えてそう話しながらリビングのほうへ進んだ。

パカーッ!! なんと、玄関のドアが全開状態だった。この部屋の隅にあったラックが倒され、オーディオ・システムが盗まれていた。
開いたドアから外にでたご主人は、空に向かって数発、威嚇発砲してから、庭を見に廻った。戻ってきて言うには
「夜警のヤツ、ゲートの小屋で番犬を抱きとめていた!」

裏庭に私もでてみて、自転車が無くなっていることに気がついた。さっきの、あの大きな物は自転車だったのだ、とそこで気がついた。
でも、塀の向こうへ歩いていったのは、何故?? なぜ落ちずに歩けるの??

ダイニングにある警備会社への通報ボタンを押してあったので、ピーポピーポとやってきたが後の祭り、なんのお役に立つわけでもない。夜が明けたら警察へ届けるということで引き上げていった。
もう一回りしてから寝るというご主人を庭に残し部屋に戻ったが、合点がいかず、眠れない。そう、あの超ノーリョク者の泥棒のことである。
なぜ彼は空中を歩いたのか? 私は、決して寝ぼけてなんかいなかった。

午前中、警察がきて、ドラマのように指紋を採ったりした。そして、一応夜警を共犯の疑いで連れて行った。仕事から早めに引き上げてきたご主人が外回りを調べてみたら、塀の外、隣家の建築中の現場にブロックが積んであったそうだ。ちょうど塀の高さに、、、、

夜警は翌日だったかに釈放され、犯人は、、、不明のまま。


夢に出てくる自転車泥棒

今でも時々夢に見る。
塀の上で、自転車を担いだ人たちが踊っている夢である。
それを見て唖然としていると、銃声がして目が開く。

そんなときは必ず、窓の外で車がパーンと大きなノッキング音を響かせている。